あらすじ
書店員の川瀬栞は、売るための言葉を書くことに疲れていた。
平台から外される本、返本の箱へ戻っていく本、短い言葉で「刺さる」ように作られていく棚。好きだったはずのものを前にして、栞は少しずつ自分の生活まで動かせなくなっていく。
そんなとき、広島に住む叔母から新米を送るという連絡が届く。
栞が思い出したのは、高校時代に行けなかった広島への修学旅行だった。
叔母の家で出されるおにぎり、酒蔵に響く水の音、川向こうの酒屋、尾道いなりの弁当、平和記念公園。
言葉にできないものを前にしながら、栞は数日遅れでは済まない修学旅行を、ひとりで歩き直していく。