あらすじ
どこか知らない大陸の、地図も不確かな辺境で、巡回医師の旅をしている二人の師弟がいた。
二人とも獣人で、魔法使いで、医師。そんな師と弟子。
師はいずこかで魔法を修め、人知れず隠者となって、その弟子とともに特殊な医療技術を編み出し、人のために尽くしていた。
編み出した技は、
『接触知覚による診断』『流体・粒子制御による治療』『薬剤を使わない体機能の干渉制御』『錬金術の応用から抗菌薬生成』
深く説明もないまま、特に何でもない技術のように、とりとめのない症例にでも、要所にそれらが使用される。
ただそれらはひそやかに、隠者のわざとして、辺境に住まう誰にも理解されないまま、巡回は行われていた。
そしてだれにも理解されないまま、物語は進む。
物語の始まりは、それらを生み出した師の逝去から始まる。
弟子の名はリゲル。師を見送った後も、それでもリゲルはひとり巡回医療の旅を続けることにする。
その旅の途中で、病魔の広がり始めた村に行き着き、リゲルは一人の不遇な少年と出会うことになる。その少年は、脳神経まで犯す病に罹患していた。
かつてないほどに困難な治療に直面するリゲル。彼はその過程の中でも活路を見出すが、それがまた、真の魔法の始まりとなることに本人は気が付いてもいなかった。
治せたと思っていた。完治したはずだった。自身の油断と自惚れを裏腹に、弟子は師と己の始まりの魔法を、再び目にすることになる…