あらすじ
迷宮は、人を殺す。
けれど本当に厄介なのは、殺した後だった。
死んだ者の声を覚え、帰りたいという未練を食い、次の誰かを呼ぶ。
「助けて」「置いていくな」「ここにいるよ」
その声に返事をした者は、もう迷宮の外へまっすぐ帰れない。
ノラ・ヴェイルは、町外れの小屋診療所で怪我人を診ながら、迷宮帰りの違和感を拾う救助屋だ。
相棒は、匂いと気配を読む小さな黒い魔物ヨル。
依頼はいつも、救助、所在確認、患者の証言、町の小さな異変から始まる。
ノラは最初から迷宮を閉じるために動くわけではない。
けれど、その穴が死者の声を使って次の犠牲を呼んでいると分かった時、彼女は核を奪い、迷宮を閉じる。
救える命は救う。
取り戻せない声は、せめて次の罠にさせない。
これは、死者を戻す物語ではない。
死者の声で、次の誰かを呼ばせないための物語。