あらすじ
営業職として平凡な日々を送っていた相馬直人は、ある日あまりにも地味な事故で命を落とし、死後受付センターの事務的な女性・ミゼリアから、辺境異世界ラグナバルトへの“特例派遣”を告げられる。来世の待遇向上と引き換えに異世界で功績を上げることになった直人は、翻訳耳飾りひとつを手に、剣と魔法の世界へ送り出される。
しかし、そこで彼を待っていたのは、夢に見た勇者生活ではなかった。最初に足を踏み入れた冒険者組合で出会ったのは、爆発しか能がない自称天才魔導士ユラ、ネズミやぬめるものが苦手な護衛騎士レドナ、そして酒癖最悪の神官トトル。そろいもそろって問題だらけの三人と成り行きでパーティーを組まされ、直人は異世界に来たその日から、魔物退治より借金と未払いの後始末に追われることになる。
畑を荒らす羽根ウサギ退治では畑と柵を半壊させ、初仕事の報酬は補償でほとんど消滅。ようやくまともに稼げると思った巨大魔獣討伐では、狭い旧水路でぬめる怪物と死闘を繰り広げる羽目になる。それでも、現実感覚と事務処理能力だけは妙に高い直人は、戦闘ではなく交渉と管理で仲間たちを支え、トラブルだらけの依頼をどうにか成功へ導いていく。
最強の力も特別な加護もない。あるのは、社会人として鍛えられた忍耐力と、契約書を読み抜く目だけ。
それでも、剣より先に請求書が飛んでくるこの異世界で、直人は少しずつ、自分の居場所と仲間との絆を見つけていく。
これは、勇者になれなかった男が、ポンコツだらけの仲間たちとともに、世界を救う前にまず生活を立て直していく、騒がしくも少しあたたかい異世界コメディである。