あらすじ
僕を殺した犯人は、僕だった。
幻都アガルタ。雨と地下鉄と古い記録に満ちたその街で、ショーダンサーの女性、エミー・グレイス・ハーパーが殺された。
高校生の御影レイは、その死を夢で見ていた。
被害者として喉を裂かれた恐怖。加害者として黒いナイフを握った感触。雨の匂い、赤い照明、死にたくないという声。すべてを覚えている。
なのに、犯人の顔だけが思い出せない。
レイは、同じ魂を持つ別人――同魂者たちの記憶を観測する少年だった。彼にとってエミーの死は、最初は「僕がひとり死んだ」だけの出来事だった。
だが、事件を追う新聞部の少女・白瀬真昼は、それを許さない。
「関係ない人が殺されたら、誰も名前を呼ばなくなるでしょ」
被害者も、加害者も、目撃者も、すべて自分。
それでも、同じ魂なら同じ人間なのか。
黒い傘の殺人者《オメガ》は、なぜ同魂者を殺し、その記憶を奪うのか。
これは、自分を殺す物語ではない。
自分ではない自分の名前を、取り戻す物語。