あらすじ
2094年。港都商事資材調達部の赤松官兵衛は、インドネシアの洋上プラント【クマクムラン】での出張を終え、帰国の途についた。
本来なら来週の定期便で帰るはずだった。しかし急遽、東南アジアの物流企業S社の貨物船に相乗りすることになった。海賊に襲われた船だと聞いたが、正規の手続きだ。問題はないだろう。
乗船直後、携帯端末に連絡が入った。
「港都商事総務部の篠崎と申します」
会社からの連絡は日常だ。特に疑わなかった。
その夜、官兵衛は見てしまった。
コンテナの陰で行われる暴行。連れ去られる男。港都商事のコンテナの隣に隠されたIDキー。そして古着に紛れた、大量の違法薬物。
横浜港まで、あと五日。
公海の上に、逃げ場はない。
赤松官兵衛、四十一歳(前厄)。港都商事資材調達部の平凡なサラリーマン。
黒田官兵衛から名付けられたことには、ずっとコンプレックスがある。どう考えても名前負けだ。普通の商社マンで、戦略も策謀も縁がない。
走れない。戦えない。策を練るほど頭が回るわけでもない。頼れるのは、顔も知らない「篠崎さん」の声だけ。
それでも五日間、やり過ごし、隠れ、粘り続ける。
武器は商社マンとして培った知識と観察眼、そして地味な粘り強さだけだった。
本作は「サハギン-人型警備潜水艇-」「碧海アイランド」と同じ2090年代の世界線を舞台にしています。直接の続編ではありませんが、それぞれの作品をお読みの方には、見覚えのある場面があるかもしれません。