あらすじ
マナが満ち、神々と精霊の息吹が残る世界、テラ・アルカディア。その大地には、後世へ語り継ぐべき壮麗な自然や叡智の結晶――「異世界遺産」が点在していた。
物語は、アストリア大陸北東の辺境、アイゼンヴァルト公国の静かな書庫から始まる。十八歳を迎えた公子ルーカス・フォン・アイゼンヴァルトは、政務よりも古文書に綴られた遺産の数々に心を奪われる、夢見がちな青年であった。
成人の日、賢君である父ジークフリート公は、彼に一冊の古びた「始祖の手記」を託し、旅立ちを命じる。表向きは次代の君主としての見聞を広げる旅。だがその裏には、遺産の力を狙う謎の組織「アルカ・ノヴァ」の動向を探る、極秘の任務が隠されていた。
供は二人。過去に謎を秘めた、冷静沈着なメイド兼護衛アメリア・ナイトシェード。そして陽気で飄々とした、猫族の料理人兼護衛ジル・レオンハート。装甲馬車シルフィード号と愛馬ゼファーと共に、ルーカスは生まれ故郷の「鉄の森」を後にする。
最初の目的地は、国境の自然遺産【鳴き龍の洞窟】。だが現地の現実は、書物の知識どおりにはいかなかった。麓の村は貧しく荒れ、貴族へ敵意を向ける。やがて一行は、洞窟の「龍の鳴き声」を利用して旅人を脅す盗賊団の存在を知る。アメリアはメイド服の下から二剣を抜き、舞うように敵を退ける。ルーカスは、彼女がただのメイドではないことを悟る。
だが問題は単純ではなかった。村は盗賊団に上納する見返りに、より凶暴な魔物から守られているという、歪な共存関係にあったのだ。善悪では割り切れぬ現実に、ルーカスの理想は打ち砕かれる。それでも彼は諦めず、仲間の力を結集する。ジルの情報収集、アメリアの剣技、そして自らの古代語と地形学の知識。盗賊団のトリックを逆用し、洞窟そのものを罠とする作戦を実行する。
手記に記された古代合金「星の涙」の弱点――特定の音階の歌――を突き、ルーカスは偽りの龍の声を打ち破る。誰一人殺すことなく、捻れた関係を解きほぐすことに成功した。この一件を通して、彼は知識を現実に活かす知恵と、仲間との絆の尊さを学ぶ。
事件の背後にちらつく「アルカ・ノヴァ」を追い、一行は自由都市ライエンのWHGO本部へ。だがそこには敵が潜み、旅はさらに深い謎へと続いていく。そして彼らのもとへ、大賢者の孫娘フィリア・エレンディア合流せよ、との伝令が届くのだった。