あらすじ
鉄は
黙っていた
王国の朝も
夜の鐘も
すべては
静かな秩序のふりをして
そこにあった
けれど
触れられなかったものがある
怒りという温度
涙という震え
名前のない痛み
それが彼女に触れたとき
鉄は初めて
記憶を持った
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捨てられた令嬢は
何も壊していない
ただ
“耐えなかった”だけ
その瞬間
鍵は鍵であることをやめ
剣は剣であることをやめ
王冠は
ひざまずいた
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引鉄は
誰の手にもなかった
彼女の胸の奥で
ただ
ひとつだけ鳴った
拒絶されたものすべてが
世界に戻る音
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王国は理解した
これは魔法ではない
これは罰でもない
ただ
共鳴だった
鉄が
本来の居場所へ
還っていく運動
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そして彼女は
静かに立っている
何も求めず
何も奪わず
ただ一つだけ
世界に問いかけるように
「私は
ここにいていいのか」
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鉄は答えない
だが
すべての金属が
その問いに震えていた