あらすじ

鉄は
黙っていた

王国の朝も
夜の鐘も
すべては
静かな秩序のふりをして
そこにあった

けれど
触れられなかったものがある

怒りという温度
涙という震え
名前のない痛み

それが彼女に触れたとき
鉄は初めて
記憶を持った

---

捨てられた令嬢は
何も壊していない

ただ
“耐えなかった”だけ

その瞬間
鍵は鍵であることをやめ
剣は剣であることをやめ
王冠は
ひざまずいた

---

引鉄は
誰の手にもなかった

彼女の胸の奥で
ただ
ひとつだけ鳴った

拒絶されたものすべてが
世界に戻る音

---

王国は理解した

これは魔法ではない
これは罰でもない

ただ
共鳴だった

鉄が
本来の居場所へ
還っていく運動

---

そして彼女は
静かに立っている

何も求めず
何も奪わず

ただ一つだけ
世界に問いかけるように

「私は
ここにいていいのか」

---

鉄は答えない

だが
すべての金属が
その問いに震えていた


連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/06/14
  • 現在の作品『鉄律の王女 ―引鉄の乙女は王国を共鳴させる―』