あらすじ

将軍の世継ぎ争いに端を発した応仁の乱は、いつしか大義を見失い、果てなき泥沼と化していた。その長きにわたる混迷は人間の自制心を崩壊させ、野武士は私欲のために刃をふるい、民は恐怖に怯え、国土は荒れ果てていた。  その中で堺の町だけは異質だった。堅牢な環濠に守られたその自治都市は、富を蓄え、独自の文化を爛漫と咲かせている。さながら混沌の海に浮かぶ孤高の楽園である。  宵闇が降り、無数の灯籠が雲を焦がさんばかりに煌々と灯る頃。町の一角、とりわけ妖艶な気配を放つ楼閣があった。軒先に揺れる提灯には、ただ一言、血のような朱色でこう記されていた。 ──地獄。  そこには、自らをそう名乗る若き遊女が、現世の罪を一身に纏うかのように座している。

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エブリスタ2026/06/13
  • 現在の作品地獄の境に咲き誇る華