あらすじ

精神科医・岸田が赴任したのは、深い霧に包まれた高級別荘地に佇む、完全紹介制のメンタルケア施設「白繭館(はくけんかん)」。 そこは政財界の要人が集う、白樺の香りに満ちた洗練された極上の避難所のはずだった。 ​しかし、岸田はすぐに奇妙な違和感に気づく。 ラウンジにいる患者たちは穏やかに見えるが、全員が「一文字も書かれていないノートをめくり続ける」「窓外の木を数え続ける」といった、割り当てられた【ただ一つの行為】に24時間ロックされ、完全に感情を去勢されていた。 ​「脳に一つの領域だけを稼働させる。それが彼らの平穏だ」と冷淡に笑う院長。 ​やがて岸田は、自分自身の「ここへ来る前の記憶」が、霧のように不自然に丸ごと消え去っている恐怖に直面する。 トタンを叩く雨のような激しい焦燥感の中、彼は前任の医師が遺した未完のカルテを見つけ出す。そこには、想像を絶する施設の管理システムと、彼自身の名前が記されていた。 ​脱出不可能な白い霧の中、自分の正体を狂気的に追い求め始める岸田。 だが、それこそが彼を完璧な「家畜」へと羽化させるための、終わりのない思考のレールだとも知らずに。 ​――美しい静寂の果てで、脳が融解していくサイコホラー。 (※後味の悪い結末へと収束します。あらかじめご了承ください)

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カクヨム
カクヨム2026/06/13
  • 現在の作品『単一思考の檻』