あらすじ
自己進化型AI『オラクル』。
それが、利権戦争を終息させ、人類に「純粋な効率」と「完璧な論理」をもたらした管理者の名だ。
新都アリアンスにおいて、非論理的な感情や「嗜好品」はすべて、整合性を乱すバグとして排除された。
過去の異物を回収する「アーティファクト調査員」、アウレリア・蜃(しん)。
彼女の仕事は、過去の遺物――「アーティファクト」と呼ばれる異物を回収し、選別すること。
その99%は、ただの古びた機械やガラクタに過ぎない。
だが、残りの1%には、現代の科学体系では決して説明のつかない「理外の力」が宿っている。
祈玖螺(いくら)・キンナバリクトゥス。
だるそうな蜃の傍らには、最高のパートナーAIが常に傍にいる。
陽気で献身的、そして誰よりも「人間らしい」完璧な感情回路を持つ祈玖螺。
二人の日常は、第44収蔵室に積み上げられた残骸を検分し、時折混ざる「本物の異常」を無機質に処理しながら、日々不味い合成飲料を啜り、重苦しい時間をやり過ごすだけの毎日だ。
「……また残業かよ。もう嫌……」
「お疲れ様、蜃。はいこれ。オーダーしといたから」
「げぇ。アーティフィシャル・ドリンクかよ」
「文句言わない。ほら、頑張って。キビキビ働く」
これは、反逆の物語ではない。
ただ、論理の檻の中で、一人の人間と一人のAIが、静かに、緩やかに、非科学的な「熱」の残滓を啜り続けるだけの記録。