あらすじ
「じゃあ、適当に二人組(ペア)作れー」
あの胃の奥が雑巾みたいに絞られる地獄の言葉が、30歳になって再び俺を襲った。
この国には、国が定めた最悪の少子化対策システムがある。
30歳までに一度もドラゴンを倒していないものはポリテク(職業訓練校)に強制徴用され、31歳になるまでに異性と『バディ』を組んでドラゴンを1体でも倒さなければ、誕生日を迎えた瞬間から【税金9割】というお上の奴隷に叩き落とされるのだ。
かつて20代の陽キャたちは、男友達とサクッと組んで「俺たちゲイでーす!」と偽装結婚のバグを悪用し、友情パワーで免税ライフ(手取り10割)を勝ち取っていた。
だが、そのバグもついに修正され、ポリテク内は人生の生存権をかけた生々しい『異性限定のナンパ・マッチングデスマッチ』の戦場と化していた──。
地味な『電気』能力しか持たない30歳の俺は、女を口説くコストすらだるがって、手取り1割の奴隷人生を受け入れようとしていた。
しかし放課後、誰もいない更衣室の裏で、俺は信じられないほど綺麗な銀髪の聖剣令嬢に胸ぐらを掴まれて脅迫される。
「見たわね変態! 通報されたくなければ、今すぐ私とバディ(結婚)を組みなさい!」
高飛車に迫る美少女お嬢様。
だが、彼女の持つ最高スペックの盾と聖剣を見た瞬間、俺の「電気職人」としての脳内配線がショートした。
(……待て。俺の電気の罠でドラゴンの動きを完全に拘束(アース)してる間に、彼女が盾の裏から聖剣で叩けば……これ、労災リスクほぼゼロの安全第一なハメ技で一発クリアできるんじゃね?)
別の女を口説くコストはゼロ。相手は美人。上書き(2回目の現場)なんてだるいから一生この1回でいい。内心の「まんざらでもなさ」を隠し、俺は彼女の脅しに渋々乗ったフリをする。
──だが、俺はまだ知らない。
彼女が実は『ドラゴンに一切ダメージが通らない炎使いの無能』として実家を追放され、誰にも相手にされず完全に詰みかけていたという哀れな裏事情を。
──そして彼女もまた、まだ知らない。
自分が「都合のいい高スペック工具」として逆計算されていることも。そして、男が提示する「安全第一のハメ技」によって本当に自分が救われた瞬間、自分のプライドと母性が歪んだ方向に大暴走し、「絶対に2回目の現場に行かせない激重ヤンデレ嫁」へとクラスチェンジしてしまう未来を。
お互いに本当の腹の内を隠したまま、最悪で最高のビジネスパートナー(夫婦)のダンジョン施工が今、始まる!