あらすじ
横浜の山の上に建つ私立青嶺高校。
高校一年生の煙田一剣良(けむのた いちけんろう)は、身長151センチの小柄な少年だった。勉強も運動もそれなりにできるが、体格差だけはどうにもならない。それでも困っている人を見ると放っておけない、強い正義感の持ち主だった。
入学直後のある朝、一剣良は市民の森の入口で一人の少女と出会う。
柏倉芙由子(かしわくら ふゆこ)。
目を奪われるほどの美しい少女だったが、右頬には生まれつきの太田母斑があった。
困っている人を見れば放っておけない優しい性格の彼女は、しばしば厄介ごとに巻き込まれる。しかし実は合気道の達人で、助けようと飛び込んできた一剣良の方が驚かされることもしばしばだった。
昼休みの森のベンチ。
放課後の図書室。
学園祭の準備。
誰かを助けながら過ごす日々の中で、二人は少しずつ距離を縮めていく。
容姿への悩み。
自分への劣等感。
将来への不安。
それぞれの迷いを抱えながらも、互いの存在に支えられ、惹かれていく二人。
やがて一剣良は気づく。
自分が柏倉芙由子を特別な存在として見ていることに。
そして芙由子もまた、自分の心の中に芽生えた想いを自覚し始めていた――。
市民の森の木漏れ日の下で育まれる、小さな勇気と優しさの物語。
これは、不器用な二人が恋にたどり着くまでの、ひと夏前の青春記録である。