あらすじ
冬野しずく、十六歳。出席日数ぎりぎり、友達ゼロ、保健室の常連。 昼休みも放課後も、彼女はいつもベッドのいちばん端で、白い天井を数えている。
しずくにはひとつだけ、ふつうじゃない才能がある。 人の表情と声と、ほんのわずかな間合いから、その人が「今、何を一番こわがっているか」を当てることができる。そして、その怖がっているものを別のものにすり替える嘘を、たった一つ、完璧に組み立てられる。
派手な能力じゃない。魔法でもチートでもない。 ただ、しずくの嘘を聞いた人は、その日だけは死なない。
三年前、しずく自身も誰かの嘘に救われた。だから今度は、自分が嘘をつく番だと思っている。
ある雨の日の屋上で、しずくは「全校生徒の人気者」朝凪ひかりと出会う。 笑顔の天才、勉強もスポーツも完璧、誰からも好かれる女の子。 ──そのひかりが、誰にも気づかれずに、たった一人で、ゆっくりと壊れかけていた。
「冬野さんって、嘘、得意なんでしょ?」 「ねえ、ひとつだけ、嘘をついてもいいですか? わたしを、ここから連れて行ってくれる嘘」
しずくが用意するのは、銃でも刀でも魔法でもなく、たった一行の嘘。 それでも、世界はちゃんと変えられる。
これは、嘘で誰かを生かしてしまった少女と、笑顔で誰かを殺しかけていた少女の、放課後だけの共犯の物語。