あらすじ
王太子グランツ殿下に、何度も連絡を既読無視されてきた技術者令嬢ノエリカ・リンドヴェール。
彼女が国のため、そして命を救うために開発していたのは、魔石で動く携帯型通信端末《m Phone》と、異世界初の連絡術式《LINK》だった。
橋の崩落、薬草不足、魔物出現。
助けを求める声が届くようにと作ったものだったが、王太子はそれを「王宮を乱す玩具」と切り捨て、ノエリカの緊急連絡すら既読無視し続けていた。
さらに婚約破棄を告げたうえ、《LINK》の権利まで王家のものにしようとする王太子。
怒りと悔しさの中、ノエリカはついに王太子をブロックする。
そんな彼女の手を取ったのは、北方辺境を治めるローレンツ・ノクスヴァルト公爵だった。
彼はノエリカの怒りも恐怖も否定せず、その発明の本当の価値を誰よりも理解してくれた。
王都を離れたノエリカは、ローレンツの領地で《LINK》を本格運用し始める。
既読、未読、グループ、スタンプ、緊急通知。
最初は混乱も多かったが、《LINK》はやがて、吹雪の中を走る伝令を減らし、助けを求める声を確かに届けていく。
しかし、情報を支配したい王宮は、《LINK》を危険な術式として潰すため、ある罠を仕掛ける。
助けて、が届く場所を守りたいノエリカ。
情報を選び、隠し、民を従わせたい王宮。
既読無視されてきた令嬢の一通の通知が、やがて国中の人々を動かしていく。
そして王宮が隠してきた嘘を暴いたのは、王太子の命令ではなく、国中から返ってくる無数の既読だった。