あらすじ
「ラングレイ子爵家との婚姻が決まった。相手は現当主のバルト・ラングレイだ」
ラングレイ子爵家。その名はフェリシアも知っていた。
王国の北部に広がる広大な荒れ地を領有する、歴史だけは古い没落貴族。現当主のバルトは若くして家督を継いだが、領地の深刻な財政難と、それに伴う多額の借金に苦しんでいるという。
「ラングレイ家は、我が家からの資金援助を求めている。私はお前の持参金として、彼らの借金の一部を肩代わりすることに合意した。つまり、お前は我が家に対する債務の代わりに、ラングレイ家に嫁ぐのだ」
父親の口から出たのは、娘の結婚ではなく、あからさまな「人身売買」の条件だった。
「お前に拒否権は無い。婚礼は来月、ラングレイ領の本邸で行う。荷物は、必要最低限のものだけを持っていけ。我が家の資産をこれ以上お前のために使うつもりはない。……下がれ」
伯爵は再び書類に目を落とし、対話を打ち切った。
「……分かりましたわ、お父様。ベクソン家のご意向に従います」