あらすじ
梅雨が明けた頃、怪物演出家・相良春男が、毎週末かならず小劇団「まくあき」の舞台に現れるようになる。
彼の視線の先にいたのは、看板女優ではなく、粗削りで舞台映えしない下っ端女優・難波みやこだった。
相良は彼女に“演技をつけたい”と申し出る。
半年間の稽古ののち、みやこは別人のように美しく変貌し、観客を圧倒する存在へと生まれ変わる。
しかし、その完璧さを目にした相良は、ただ一言だけ告げる。
「…こんなはりぼてなど、いらん」
彼が見ていたのは、美しい蝶ではなく、
粗削りで愚かで、痛々しいほど純粋だった“原石のままの彼女”だった。