あらすじ
「シフル、お前には失望した。即刻家を出ていけ」
父である伯爵の冷たい声が豪華な応接間に響いた。隣ではふわふわとした金髪を揺らす妹のエチューカが、扇子で口元を隠しながら勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
「お父様ぁ、あまりお姉様を責めないであげてくださいな。生まれつき地味なんですもの。ねっ?聖女の力が土いじりだなんて、貴族として恥ずかしいのも無理はありませんでしょう?」
「ああ、エチューカ。お前はなんと慈悲深いのだ。それに比べて」
父はシフルを一瞥する。髪は土のような焦げ茶色。着ているドレスはエチューカのお下がりで、何度も継ぎ接ぎがされている。
国には聖女の伝説がある。数ヶ月前の鑑定の儀で、妹のエチューカは稀代の光の聖女と判定された。傷を癒やし、人に希望を与える力を。
一方の姉は土の聖女。判明した能力は土壌改良と植物の育成促進。地味だ。
あまりにも地味すぎて、父も母も婚約者だった第二王子でさえもエチューカの引き立て役として扱った。
「シフル、婚約も破棄された。殿下はエチューカを選ばれたのだ。お前のような薄汚い女が王族に嫁げるはずもなかろう?」
「はぁ……わかりました」
頭を下げた。涙?出ない。ないない。だけども、心の奥底でガッツポーズをする。
(やった……!やっと、やっと家から出られる!!)
前世の記憶があるので開放感でいっぱい。日本の定食屋の娘として生まれ、料理をこよなく愛していた記憶がある。
転生してからというもの、貴族の娘として料理など下賎な者のすることと厨房への立ち入りを禁じられ、味気ない冷めたスープと硬いパンを食べる日々。ウンザリ。