あらすじ
この世界の魔術師は、自分が唱える呪文の意味を知らない。
千年前に滅びた古代文明の術式を、意味もわからず丸暗記で詠唱する――それが「魔法」と呼ばれる時代。詠唱の意味を読める者は、二百年前に教会の焚書で絶えたとされていた。
魔力量ゼロ。落ちこぼれの写本係ノエルは、世界でただ一人、古代語を「読める」男だった。
暴走した聖遺物を、たった一文字書き換えて鎮めてみせた日――彼は宮廷を追放される。飛ばされた先は、地図が黒く塗られた呪詛汚染地帯。誰もが「神罰の地」と呼んで見捨てた、辺境フォグレス領。
だがノエルには見えていた。その「神罰」の正体が、主を失って壊れたまま動き続ける、千年前の便利な道具たちだということが。
「呪いは解くな。読んで、書き換えろ」
夜ごと銀の獣と化す呪いを背負い、火刑を待つ女騎士リゼ。
灯りの術式からこぼれて生まれた、文字でできた小さな相棒ピピ。
彼らとともに、ノエルは壊れた世界の「校正」を始める。
やがて各地の呪いに刻まれた、たった一つの「署名」が浮かび上がる。それは――この国の建国文書に記されたものと、寸分違わなかった。
魔力ゼロの写本係が、言葉ひとつで国の根幹を書き換える。
誰も意味を知らない魔法の世界で、ただ一人「読める」男の、痛快・頭脳系ファンタジー。
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