あらすじ

坂本浩二、四十九歳。 地方銀行の融資部長。 難しい交渉をまとめる観察眼と、言葉より先に相手を読む能力を持つ男だが、それがどこから来ているかを、職場の誰も知らない。 二十七年前、浩二は役者を目指していた。大学の演劇部でハムレットの主役を争い、親友の木村光に敗れた。 木村は今、舞台俳優として静かな評価を得ている。SNSに流れてくる木村の公演告知に、浩二は「いいね」を押せないまま、二十七年が過ぎた。 ある日、息子の悠樹が学校の演劇発表会でハムレットの主役に選ばれたと告げた。「おめでとう」とは言えた。でも。 銀行のボランティアで訪れた介護施設で、八十二歳の元舞台女優・香川澄江と出会う。「あなた、舞台に立ったことがあるでしょう」—初対面で、見抜かれた。 やめた理由は言えなかった。言えなかった理由は、ある。 澄江は文化祭の「相手役」を求めていた。浩二は「考えます」と答えた。 二十七年分の沈黙と、喉の奥に飲み込んだままのセリフの、続きの物語。

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カクヨム
カクヨム2026/06/12
  • 現在の作品セリフの続き——二十七年前、ハムレットの主役を親友に 譲った四十九歳の銀行員が、息子と八十二歳の元女優に 見つけられる、静かな再起 喉の奥にしまったままの声が、まだそこにあった