あらすじ
歴史学者・宗方(むなかた)は、ある山間部の一角が、江戸時代の検地帳から現代の地図に至るまで「不自然に丸ごと抹消されている」ことに気づく。
学会の発表期限が目前に迫り、焦燥に駆られていた宗方は、周囲の不穏な警告を一蹴し、3人の助手を連れてその空白の地へと足を踏み入れた。
辿り着いた地図にない集落。そこに暮らす村人たちは、彼らを拒絶しなかった。
だが、決して歓迎もしなかった。
挨拶をしても目は合わず、名前すら覚えようとしない。それは悪意による排他ではなく、まるで屠殺場の家畜を見るかのような、徹底した「無関心」だった。
異様なほどに肥大した作物、土壌から漂う微かな腐臭、そして村人たちの機械的で無駄のない動き。
助手たちが次々と不調と違和感を訴え、撤退を懇願する中、歴史の深淵に魅了された宗方は、村の奥深くに隠された「千年の記録」の解読に没頭していく。
なぜ、この村は千年も存続できたのか。
なぜ、村人は自分たちの調査をただ遠巻きに黙認しているのか。
その本当の意味を解き明かしたとき、彼らは気づく。
自分たちが、決して逃れられない底なしの泥濘(でいねい)に、自ら飛び込んでいたことに。
――解き明かした歴史の終わりで待つ、息もできないほどの絶対的な絶望。
(※最後に救いのある展開は一切ございません。後味の悪いホラーが苦手な方はご注意ください)