あらすじ
『行政文書は、未来への手紙になることがある』
一枚の古い観光ポスターから始まった小さな謎が、バラバラだった三つの町をつなぐ「新しい色」になるまで。
岡山県瀬戸内市役所・観光文化戦略課に勤める宮地薫は、本庁の書庫で、昭和五十七年に作られた一枚の牛窓観光ポスターを見つける。そこに隠されていた違和感を追ううち、薫は、瀬戸内市合併前の旧三町「牛窓・長船・邑久」を結ぼうとした、過去の構想「海から道へ」の痕跡にたどり着く。
歴史好きとしての好奇心に突き動かされ、点と点をつないでいく薫。だが、上司の黒田が突きつけたのは、行政の仕事として避けて通れない現実だった。
現場の負担、安全管理、予算、文化財の扱い、そして、地元の人ほど地元の価値を見過ごしてしまうという難しさ。
企画を「ただの夢」で終わらせないため、薫は高校時代の後輩であり、現在はデザイナーとして働く椎名紬を巻き込む。文化財担当の先輩、観光案内所のプロ、関西弁の若き学芸員。妥協のないプロフェッショナルたちに揉まれながら、薫と紬は、牛窓の「海の青」、長船の「鉄の火」、邑久の「悠久の記憶」を結ぶ、新しい観光ブランド「瀬戸内カラー」の核へと近づいていく。
海と陸に残された、同じ鍵穴の形。
それは、古代吉備の海と陸を現代の旅で開くための、ひとつの入口だった。
これは、机上の空論を「歩ける旅」へと変えていく、不器用で熱い地方公務員とデザイナーの本気のお仕事小説。