あらすじ
地獄の底で苦しむ大泥棒カンダタの前に、極楽から一本の蜘蛛の糸が垂れてきた。
それは、お釈迦様が与えた一筋の救い。
普通なら涙を流してすがるところだが、カンダタの第一声は違った。
「細くないか?」
地獄から極楽まで続くには、あまりにも頼りない蜘蛛の糸。
カンダタは耐荷重、利用条件、複数人利用の可否を確認し始める。
やがて彼は気づく。
この糸は、重さで切れるのではない。
「来るな」「降りろ」「俺の糸だ」と言った瞬間に切れる、発言判定の救済なのだ。
勝ち筋を見つけたカンダタは、押し寄せる亡者たちに本音を飲み込み、必死に丁寧語で対応する。
「来……来られる方は、足元にお気をつけください!」
「救済は共有資源でございます!」
口だけは極楽へ近づいていく。
しかし、心はまだ血の池にいる。
感謝には耐えた。
功績にも耐えた。
だが最後、亡者の一言がカンダタの所有欲を揺さぶる。
「カンダタさんの糸、すごいですね!」
これは、救済の仕組みを見破った男が、褒められて本性を漏らすまでの物語。