あらすじ
「エリス、今日も来客がある。部屋から出ないように」
魔力を持たない「ヴェルテ家の恥」として、十年間も透明人間のように扱われてきた侯爵令嬢・エリス。そんな彼女に命じられたのは、内乱で疲弊した隣国「ラーデン王国」への、姉の身代わりとしての政略結婚だった。
待っていたのは、冷徹と噂される若き国王・カイル。
しかし彼から掛けられたのは拒絶ではなく――「よく来てくれた、エリス」という、生まれて初めて名前を呼ばれる温かい言葉だった。
魔力はなくとも【植物の声を聴く力】を持つエリスが、心を込めて荒れた庭に「水」をやり始めたとき、止まっていた二人の時間が静かに動き出す。
「来年も、再来年も、ここで春を迎えよう」
傷ついた少女が、誠実な王と出会って「本当の居場所」を見つける、心の再生の物語。