あらすじ
*登場人物
悠稀:十九歳。三日月湖のほとりにある民宿兼食堂「七星の家」で、祖母の入院中に朝食作りや家計を支える青年。
咲空:悠稀の母。隣町の高校で働く保健室の先生。十年前に町を離れた理由を、息子に話せないまま過ごしてきた。
百伽:ユニコーンのぬいぐるみを大切にする十二歳の少女。祖母から預かった鍵をぬいぐるみに隠している。
祐太、碧、佳澄、晟治、広登、智加、周星:七星の家に集まり、食卓を騒がせながら悠稀を支える若者たち。
*あらすじ
三日月湖のほとりにある古い民宿兼食堂「七星の家」。十九歳の悠稀は、祖母の入院をきっかけに、朝食作り、家計、店の切り盛りを一人で背負っていた。セロリに文句を言う祐太、ユニコーンのぬいぐるみを連れ歩く百伽、帳簿を整える碧。にぎやかな食卓だけが、悠稀にとって壊れずに残った家族の形だった。
十年前、七星の家ではシャンデリアアームの落下事故が起きた。母の咲空は「私じゃない」と言い、その後、町を離れた。九歳だった悠稀は、母に捨てられたと思い込み、三日月湖のトンネルで「もう二度と会いませんように」と願ってしまう。
しかし祖母の家計簿、月倉庫の鍵、欠けたシャンデリアアームが見つかったことで、事故の真相が少しずつ動き出す。咲空は逃げた母ではなく、修繕費と生活費を払い続けていた。周星もまた、十年前から言えない言葉を抱えていた。
セロリ入りスープ、辛い揚げ餅、曲がったユニコーンの看板。笑いと涙の食卓を通して、悠稀は「家族」とは、傷つけなかった人だけで作るものではなく、逃げた後に戻る扉を開けておくことなのだと知っていく。