あらすじ
〈あらすじ〉
瀬戸内の小さな港町・帆ノ緒市。
坂の途中にある喫茶あさがおで姉を手伝いながら、旧映画館通りの編集社「帆ノ緒舎」に勤める火岬柊羽は、町のあちこちで起きる小さな怪異に、恋人の凪紗とともに向き合っている。
子どもの帰り道をずらす坂。
帰るべき向きへ戻ろうとする祭りの灯り。
閉店間際の喫茶にだけ残る、届かなかった言葉。
写ってしまった、今はないはずの坂の景色。
そして、人の口から自然にこぼれ始める、呼ばれてはいけない古い名前。
凪紗は、町では時折「道返し様」と呼ばれる、境に近い側の継ぎ手だ。
彼女は怪異を祓うのではなく、向きと順番を読む。
一方で柊羽は、紙と記録の側から、町の異変に“置き場所”を与えていく。
やがて二人は、亡き祖父が町の名や道をどう残し、どう眠らせていたのかを知る。
怪異を倒すのではなく、返し、置き、整える。
食卓と地図、恋人と町の境界をめぐる、地方怪異連作。