あらすじ
私を誰よりも強く意識してくれた、傲慢で愛おしいお兄様。
私に勝とうと血だらけで剣を振るうあなたの姿は、美しくも儚い薔薇の花のようでした。
あの日、あなたの嫉妬が私の頬を焼いた時、私は嬉しさで胸が張り裂けそうだった。
なのに、あなたは私を置いて家を出ていってしまった。
だから、少しだけお兄様を試したのです。
「顔の傷のせいで、変態に嫁がされる」――そんな噂を流したら、あなたは私を救いに来てくれますか?
まさか、本当に来てくれるなんて。
まさか、右目を抉り、左腕を無くし、五感のすべてをボロボロに破壊してまで、世界中のダンジョンを制覇して『幻の妙薬』を持ち帰ってくれるなんて。
「妹に届けなきゃいけないんだ」
目も耳も聞こえないまま、私を誰かも分からずに、受付へ這って進むお兄様。
「失敗した、ごめん」と泣きながら、私の腕の中で眠りについたバカな人。
職員も大臣も、早く私の顔の傷を治せと騒ぎ立てるけれど。
どうして、お兄様が命を懸けて勝ち取った奇跡を、私のたかが顔の傷ごときに使わなければいけないの?
頬の火傷は、お兄様が私にくれた、世界で一番愛おしい刻印。
私は笑って、その妙薬を、ボロボロなあなたを再生させるためにすべて使った。
家柄も、栄誉も、もう私たちには何もありません。
ゆっくりと開いたその両目で、これからは私だけを見て。
ずっと、ずっと、一生2人きりで一緒にいようね、お兄様。