あらすじ
「総司を救えなかった」
それが沖田林太郎の最期の言葉だった。
弟は新撰組一番隊隊長・沖田総司。
だが兄である林太郎は、京に残らなかった。
それまで同じ道場で剣を学び、同じ夢を追っていた兄弟の運命は、文久三年の浪士組分裂によって二つに分かたれる。
弟が新撰組を選んだ日、兄は江戸で新徴組を選んだ。
その日を境に、二人は別々の幕末を生きることになる。
やがて幕末は終わる。
総司は病に倒れ、近藤勇は斬首された。
林太郎自身は妻を得て、子を育て、仲間たちと共に長い人生を生きた。それでもただ一つ、どうしても捨てられない後悔があった。
――もしあの時、総司の傍にいたなら。
老いた林太郎は、その想いを抱えたまま息を引き取る。
しかし次の瞬間、彼が目を覚ますと、そこは文久三年の京だった。
まだ総司が笑っている時代。
まだ近藤勇が生きている時代。
まだ誰も失われていない時代。
これは天が与えた奇跡なのか。
今度こそ弟を救う。
そう決意した林太郎は、かつての仲間たちと再び出会い、歴史を変えるために動き出す。
だが運命は、彼が思うほど優しくはなかった。
弟を救えば誰かを失う。
一人を救えば、別の誰かが失われる。
弟か、仲間か、家族か。
幾度となく選択を迫られながら、林太郎はやがて知ることになる。
本当に救うべきものは何なのかを。
これは幕末を舞台に描く、沖田総司の兄・沖田林太郎の死に戻り群像劇。