あらすじ
「お仕事、お疲れ様。お風呂、ちゃんと沸かし直しておいたから」
金曜日の深夜一時二十分。疲れ果てて帰宅した夫・透のジャケットから漂う、見知らぬ甘ったるい柑橘系の香水。
それは、透の部署の後輩である三雲由衣が、私に向けて仕掛けた明確な『匂わせ』の罠だった。
夫が本当に私を裏切ったのか、それとも泥棒猫の罠に絡め取られているだけなのか。
泣き叫んで問い詰めるような無様な真似はしない。
私は夫を愛している。狂おしいほどに。だからこそ、完璧な証拠で外堀を埋め、一撃で全てをコントロールしなければならない。
しかし、女の仕掛けは一度では終わらなかった。
薬を盛られた夫のベッド写真。
身に覚えのなさから魂の底から号泣し、必死に無実を訴える夫。
「……まさか、嵌められた?」
一見完璧に見える罠の矛盾を、冷徹なまでの書類管理能力で暴き出していく妻。
プライドをへし折られ、妻の信頼を取り戻すために従順な大型犬と化す夫。
そして、夫から拒絶されて焦り、最後の嘘で泥仕合を仕掛けてくる泥棒猫。
「大切な家庭を脅かそうとする害蟲は、跡形もなく叩き潰すわ」
これは、外面の罠に騙されかけた夫婦が、一人の泥棒猫を徹底的に社会の底へと突き落とし、新婚当時以上の強固な絆を結び直すまでの、愛と執念の逆襲劇。