あらすじ
婚約破棄の断罪劇、その真っ最中——悪役令嬢クロエ・ド・サヴァランは、王子を素通りして立食のテリーヌを食べていた。
「火入れ、完璧。塩だけ惜しい。——87点ですわ」
前世は食品メーカーの研究員兼、覆面食レポブロガー。転生しても舌は止まらず、社交界で料理に容赦ない点数をつけていたら断罪された。心当たりは、ある。でも美味しくないものを美味しいと言うほうが、よほど不誠実だと思う。
公爵家を出て転がり込んだ先は、下町の客ゼロの食堂。世界一まずいシチューに23点をつけたその日から、辛口だけど的確すぎる食レポが、頑固な店主を、追放された天才料理人を、市場を、屋台を——気づけば王都の食文化まるごとを変えていく。
「お嬢様、また点をつけていますね」
「つけていませんわ。記録しているだけ」
これは、100点の一皿を探し続ける味見係と、その点数で人生が変わっていく人たちの物語。本人に革命の自覚は、最後までありません。