あらすじ

大久保長安、駿府にて病死。実子は全員切腹。 遺体は掘り起こされ、安倍川の河原で首を晒された。 ​慶長末期。公儀の総目付・柳生但馬守宗矩は、大大名をも凌ぐ権勢を誇った怪物の足跡を、天下の台帳から完璧に「漂白」したはずだった。 ​だが、主を失ったはずの職能たちは、むしろ主が死んだからこそ、なりふり構わずその仕組みを私物化し、勝手に動き始める。 ​神の声を騙り、闇の連絡網をその足で繋ぐ歩き巫女。 抜刀すら削ぎ落とした、死に損ないの用心棒。 梁の軋みを聞く算術家と、泥の深さを読む山師。 荷重の均衡を脳裏に叩き込み、闇の流通を担う荷役屋。 故郷の嘘の文字に縋る異邦人と、人間の人格すら偽造する書類屋。 ​公儀の目の届かない地下の配管で、歪みは滑らかに繋がり始めていた。 ​「……まだ、閉じておらぬか」 ​網の目を追う宗矩が、柳生の最深部に眠る「もう一人の怪物」の気配に気づいたとき、世界の骨組みが微かに軋む音を立てた。 ​これは、本尊なき世界で蠢く、職能の怪物たちの自律分散型ノワール。 ​──世界のあちこちに、あの怪物の『残響』だけが、まだ響いている。

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カクヨム2026/06/11
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