あらすじ

五月の終わり、石畳の路地裏に佇むカフェ「Clef」。  大学二年生の喜納雅美は、そこでオーナーの水前響子と出会う。  雅美のクローゼットに並ぶのは、すべてメンズのスーツとネクタイ。自分を定義する言葉を持たず、ネクタイを締めることで「自分」の輪郭を保ってきた雅美にとって、響子の存在は静かな衝撃だった。 「あなたのこと、男の子だとも女の子だとも思わなかった。ただ、あなたがそこにいただけ」  響子の言葉は、雅美が自分にかけていた呪いを少しずつ解いていく。  朝のコーヒー、タロットカード、そして首許に触れる響子の指先。  ネクタイという記号を媒介に、二人の距離は縮まっていく。  しかし、響子自身もまた、過去の傷から自分を守るための「枠」を抱えていた。  これは、既存のジェンダーや恋愛の形に当てはまらない二人が、自分たちだけの「鍵」を見つけるまでの、静謐で、でも温かい物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/06/10
  • 現在の作品【男装百合短編小説】鍵とネクタイのプレーンノット ~石畳のあるカフェで、名前のない恋を~