あらすじ
六十歳。鬱病。就労移行支援へ通いながら、社会復帰を目指す男。
毎朝の散歩だけが、崩れそうな日常を辛うじて繋いでいた。
梅雨の晴れ間の朝。
川辺で雀たちが群がっていたもの――それは、小さく乾いた「手」だった。
河童の手のミイラ。
そんな馬鹿げた考えに取り憑かれた男は、それを家へ持ち帰ってしまう。
やがて手は動き出し、夜ごと窓を叩く音が響き始める。
そして、水の底から現れたのは――。
湿気と閉塞感に満ちた日常の隙間へ、静かに忍び込む怪異。
中年男の疲弊した精神と妖怪的恐怖が交錯する、陰湿系現代怪談。
河童という古典的な妖怪を、現代の閉塞感と鬱屈の中へ落とし込んだ怪談です。
「怪異を恐れながらも、どこか期待してしまう」主人公の感覚を書きたかった作品