あらすじ
「君の戦闘貢献度では、もう連れていけない」
勇者アルディスにそう告げられ、退職金ゼロで勇者パーティーを追放された九条嶺一(レイ・クジョウ)。だが彼は、ただ追い出された無能ではなかった。
前世は、外資系投資銀行でM&Aを手がけた敏腕アドバイザーだったのだ。
辺境の宿場町で耳にしたのは、「魔王軍が資金難で内部崩壊寸前」という噂。
搾取構造と財務を読み解いたレイの結論は、たった一つ——
「瓦解寸前の組織は、買い時だ」。
処刑寸前の魔王城で、レイが抜いたのは剣ではなく一通の買収提案書だった。
若き魔王ヴァルナキア、敏腕財務官フィーネ、武闘派の四天王ドラグ。
立場も種族も違う彼らを、レイは「数字」で説き伏せていく。
こうして人と魔が手を組む混合商会『ノヴァ・ソシエタス』が誕生する。
信用ゼロからの初取引、女公爵マルグリットが仕掛ける関税の壁、
偽造手形と内部不正、そして信用通貨の発行——。
レイは暴力ではなく、契約魔法と複式簿記、そして金融の知恵で次々と難局を突破していく。やがて商会は株式公開(IPO)を果たし、その時価総額は王国最大の貴族商会をも超えていく。
だが、信用を制する者には次の戦場が待っていた。
南方の海洋都市が放つ対抗通貨「海札」、為替戦争、取り付け騒ぎ、
私掠船団、そして貴族院での法廷闘争。
商会が一つの“国家”の機能を帯び始めたとき、
レイの帳簿は、世界の秩序そのものを書き換えていく。
これは、剣も魔法も使えない男が、M&A・信用創造・通貨制度という
“現実の金融”を武器に、異世界経済の頂点へ駆け上がる痛快経済戦記である。