あらすじ

貴族令嬢が魔物を単独で殴り倒す世界。
 その中心にいるのは、まだ幼い子爵令嬢ラティ・フォン・アイゼンフェルトだった。
 王国辺境の子爵家・アイゼンフェルト家。
 そこに生まれたラティは、本来であれば社交界に備え、刺繍や舞踏に勤しむはずの令嬢である。
 だが現実はまったく違った。
 淑女教育と礼儀作法の裏で行われるのは、剣術・体術・対魔物戦を前提とした実戦訓練。
 そしてその指導役は、執事でありながら人間離れした戦闘能力を持つ男――セバスチャン。
 彼は完璧な執事でありながら、同時に常識外れの剣士でもある。
 静かに立っているだけで周囲の空気が変わるほどの圧を放ち、淡々とお嬢様を鍛え続ける存在だった。
 その結果として生まれたのが、魔物を単独で討伐できる貴族令嬢ラティである。
 しかし彼女の本質は、力ではない。
 ラティは幼いながらに強い“正義”を抱き、それを一切の疑いなく貫こうとする少女だった。
 その真っ直ぐすぎる価値観は、貴族社会の常識とも、領地の現実とも噛み合わない。
 結果として、彼女の行動は意図せず周囲を巻き込み、次々と騒動を生み出していく。
 拾った生き物は全て保護。
 不正は真正面から糾弾。
 必要とあらば、貴族相手でも容赦なく正義を振りかざす。
 だが誰も彼女を止められない。
 なぜならその周囲には、さらに“おかしな大人たち”が揃っているからだ。
 人外じみた戦闘力を持つ筆頭執事セバスチャン。
 貴族令嬢教育の権威でありながら情緒が崩壊気味の教育係ヴィオレッタ。
 元奴隷でありながらお嬢様に絶対の忠誠と暴走気味の愛情を注ぐ専属メイド沙織。
 まともな人間が一人もいない屋敷で、唯一“常識に近い存在”が最も非常識という歪な環境。
 それがアイゼンフェルト家の日常である。
 やがてラティは、子爵令嬢という枠を超え、領地運営・貴族社会・軍事問題にまで関わっていくことになる。
 しかしそれは重苦しい政治劇ではない。
 真剣な問題が、なぜかコメディへと変質し、命を賭けた場面ですら日常の延長線上で処理されていく。
 常識が壊れた環境で育った少女は、やがて常識そのものを正面から踏み抜く存在へと成長していく。
「お嬢様、その正義は許可できません。」
 その一言が発せられるたび、誰かの平穏は確実に崩れていく。
 これは、正義感が強すぎるお嬢様と、常識を持たない大人たちが織りなす、勘違いと成長と騒動の日常譚。
 ――平穏は存在しない。
 だが、不思議と誰も不幸ではない。
 今日もまた、アイゼンフェルト家では“普通じゃない日常”が始まっていく。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/06/10
  • 現在の作品お嬢様、その正義は許可出来ません。