あらすじ
恋とか、彼氏とか。
中学生になったら、そういうことも少しは起きるのかもしれないと思っていた。
けれど、私にはまだよく分からなかった。
本当は、ひとりだけ気になる人がいる。
同じクラスの黒瀬蓮くん。
背が高くて、目つきが悪くて、無口で、少し怖い。
女子に興味なんてなさそうで、私のことなんて見ていないと思っていた。
それなのに、文化祭委員になってから、私は少しずつ知ってしまう。
誰もやりたがらないことを黙って引き受けること。
雨の日に、何も言わず傘をこちらへ傾けてくれること。
私が何気なく言った好きな色を、ちゃんと覚えていてくれたこと。
怖そうに見える彼は、本当は不器用で、まじめで、やさしい人だった。
文化祭が終われば、もう話す理由もなくなる。
そう思っていた雨の日。
黒瀬くんは私にスマホを出させて、二人だけのトークルームを作った。
「……おれ、LINEも苦手だから」
そう言った彼の手は、少し震えていた。
これは、好きと言えない私と、うまく近づけない彼の、淡い恋の話。