あらすじ
三人の勇者として異世界に召喚された篠森澪人は、世界を救う役目を辞退した。
望んだのは、名誉でも力でもなく、家賃なしで雨風をしのげる寝床。
補償として与えられたのは、蔦と苔に覆われた古い廃城だった。
壁はある。井戸もある。屋根も一部ある。
王宮に戻れば勇者の話を蒸し返され、町に出ても金も身分もない。
ならば、この廃城をどうにか家にするしかない。
そう思って物件確認を始めた澪人だったが、地下の棺から声がする。
湯を沸かせ、と。
現れたのは、百年の眠りから目覚めた吸血鬼伯爵ヴァルドラク。
この城の元主を名乗る彼は、澪人を不法侵入者扱いし、当然のように下僕認定してくる。
ただし伯爵は、目覚めたばかりで関節が動かず、棺から出るにも支えが必要だった。
威厳はある。
顔もいい。
ただし服は黴びていて、足はつる。
澪人は伯爵の世話をしているつもりはない。
この城に住むため、事故物件を管理しているだけだ。
井戸水を汲み、湯を沸かし、布を洗い、浴場を掃除し、食料を探す。
世界を救う予定はない。
けれど、寝床と朝食と風呂くらいは救いたい。
勇者を辞退した主人公が、廃城を少しずつ家にしていく異世界スローライフ。