あらすじ
春。
所沢の空に、一本の飛行機雲が伸びていた。
高校一年生の神谷悠真は、入学初日に一人の少女と出会う。
綾瀬琴音。
初めて会ったはずなのに、なぜか懐かしい。
彼女を見た瞬間、悠真の胸には説明のできない違和感が生まれた。
そして知る。
この学校には、生徒の青春を数値化する「AP(アドレセンス・ポイント)」制度が存在することを。
友情、恋愛、挑戦、後悔――。
青春のすべてに価値がつき、売ることさえできる学園。
だが琴音は、その制度によって「ある大切な記憶」を手放していた。
そして、その記憶の中には悠真自身も含まれていた。
「ごめんなさい。私たち、どこかで会ったことありましたっけ?」
覚えている者と、忘れてしまった者。
失われた昨日と、まだ見ぬ明日。
春風に揺れる飛行機雲の下で、二人は再び出会う。
これは、値段のついた青春の中で、値段では測れないものを探す物語。
『飛行機雲が咲く頃に』
忘れたはずの初恋が、静かに動き出す。