あらすじ
四十年、システムを作り続けた。六十になった今の呼び名は「粗大ゴミ」——まだ動くのに、引き取り手がなく、処分に金がかかる。
誰にも看取られない死のあと、迎えに来たのは社名のない白いトラックだった。行き着いた先で、女が言う。「常盤実。六十歳。技術者。市場価値、ゼロ。——というのが、あなたのいた世界の査定です。私の査定は違う」
授かるのは転生と、物の損得が見える目。それだけ。若返らない。強くならない。剣も魔法も授けられない。納めるものは——未定。対価の欄が空欄の契約書に判を押して、腹の出た血圧の高い六十歳のまま、結界に守られた無人の湖畔に置かれた。
この世界に攻撃魔法はない。あるのは火を点け、水を出す程度の生活魔法だけ。武器は四十年の技術者の目と、現代で六十年暮らした生活の知恵。便所を作り、塩を採り、道具を組んで、暮らしをひとつずつ立て直していく。
序盤はスローライフです。ダンジョンも、チートも、ステータスも、覚醒もありません。
ただし、一話完結の癒やしでもありません。これは六十歳から始まる一人の技術者の一代記——暮らしが家になり、家が円になり、円が村になり、やがて世界がそれに気づくまでの、長い話です。