あらすじ
【「俺の音楽は、不完全な者たちが継いでこそ、光になるのだ」】
1978年、冷戦の鉄のカーテンを越え、ボロボロになりながら約束の地・フライベルク大聖堂へと帰り着いた孤独な狼、カール・リヒター。
古楽派からの批判に晒され、恩師の死を背負い、精神の孤立を深めていた彼が鍵盤に向かうとき、大聖堂の冷気のなかで「宇宙の法則そのもの」が咆哮をあげる。
これは、数式のような完璧な神様を讃える音楽ではない。
天へと届かない肉体の限界に悔し涙を流しながら、「チクショー!」と鍵盤を殴りつけていた人間たちの、生への執念の格闘だ。
1721年のバッハの家で「おいすー」とお茶目に笑い、100年のインクの孤独に耐え、戦後の混乱を駆け抜けたみかん色の髪の天使「マリアン」。
バッハの数理、戦艦大和の地獄の重油の海、そして天照大御神の八咫鏡が重なり合う時、全宇宙を調律する「本当の一本勝負(タイマン)」が始まる——。
人間と天使が笑い、泣きながら紡ぎ出した、異次元の音楽SF叙事詩。
音楽は、言葉が力尽きたところから始まる。