あらすじ

雨宮町(あまみやちょう)の旧市街で、三週間前から「音」が消えている。風も、声も、街の喧騒も。だが録音機材は、何も異常のない音を拾い続けている。 音響技師の深沢亮(ふかざわ りょう)は、その調査のために町を訪れる。過去に大きな事故で同僚を失い、以来何かを失ったまま生きてきた男だった。 境界線を越えた瞬間、亮は自分の足音が、声が、鼓動が、少しずつ遠ざかっていくのを感じる。そこで見た、いるはずのない誰かの姿。 無音は少しずつ町を侵食し、足を踏み入れた住民たちが、周囲から「気づかれなくなって」いく。郷土史家の協力を得て、亮は百年前に起きた同じ現象の記録にたどり着く。だがその記録を読み進めるほどに、彼はある違和感を拭えなくなっていく。 ……自分は、本当に「調べる側」の人間なのだろうか。 助けを求めても、声は届かない。大切な人の記憶が、少しずつ輪郭を失っていく。亮が追っていたはずの答えは、いつしか彼自身の足元を静かに崩し始める。 音が消えるとは、何が消えるということなのか。 読み進めるほどに、その答えは遠ざかっていく。

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小説を読もう2026/07/04
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