あらすじ
舞台は、毒と権力、そして華やかな衣装の裏に静かな悪意が息づく後宮――凰朝(こうちょう)。
主人公・蘇芷雪(そ・しせつ)は、前世で結晶学者として生きた記憶を持ちながら、今は後宮の片隅、装飾用の宝玉を扱う「珠飾房」で下働きをする、名もなき女官である。
身分は低く、誰にも見向きされない。だが石を見る目だけは、誰にも負けない。
「石は嘘をつかない。すべての変化には、必ず理由がある」――それが彼女の信条だ。
ある夜、皇后・瓔珂(えいか)が倒れる。宮中は「毒殺」の疑いで騒然となり、その日皇后に簪(かんざし)を届けた幼い女官・小蓮(シャオレン)に真っ先に嫌疑がかかる。
だが芷雪は、簪に嵌められた「白露石(はくろせき)」という石の"曇り方"に、ある違和感を覚える。この石が毒性を帯びるまでには、本来何日もの時間がかかるはずなのだ。
つまり、毒はその日仕込まれたのではない。もっと前から、誰かの手で静かに"仕込まれていた"のだ。
無実の少女を救うため、芷雪は初めて後宮の表舞台で自らの知識を晒す。しかしその瞬間、彼女は気づいてしまう――この曇り方は、あまりに整いすぎている。まるで誰かが意図的に"変化の種"を打ち込んだかのように。
後宮に、彼女と同じ「石を読む知識」を持つ誰かがいる。
静かな鑑識と、深い孤独を抱える皇后との絆、そして見えない知の対決が、ここから幕を開ける。