あらすじ
「お前の治癒は偽物だ」――聖女ミレーユの華やかな祈りの陰で、地味な治癒を理由に王城を追放された宮廷ヒーラー、リィナ。
しかし彼女の前世は、過労死した緩和ケア看護師・凪沙。喚かず、怒らず、ただ深々と頭を下げて去り際に一言。「この国の重病人、これから誰が看るんでしょうね」――聖女が治せないフリで放置してきた本物の重症者たちを、陰で支えてきた唯一の掌が、今、城を去る。
向かった先は、ヒーラーが誰も寄りつかない『見捨てられた前線』――北の辺境砦。膿んだ傷、士気の落ちた兵たち、そして眠れぬ夜を抱えた竜人の将軍ガレオン。看護師の目は誤魔化せない。
光も詠唱もない。けれど触れた相手の痛みを、すっと和らげる本物の掌。誰も看ない人々のために、彼女は今日も患者の隣に座り続ける。
派手さのない、けれど確かに人を救う物語。痛みに寄り添う温かな掌は、やがて世代と血筋を超えて受け継がれていく――。
静かで、痛快で、心があたたまる追放ヒーラー譚。