あらすじ
報道番組が、視覚障害者によるマッサージを看板に掲げながら、施術中に女性客へわいせつ行為をしていた疑いのある店を取り上げていた。画面には通りの風景、看板、モザイクをかけられた店の入口が映り、淡々としたナレーションだけが妙に冷たく響いていた。
僕の施術ベッドに横たわっていた女性客が、ふっと笑った。彼女は使い捨てのフェイスペーパーに顔を伏せたまま、肩と首の力を抜いた姿勢で、まるで自分とは関係のない話でもするように口を開いた。
「あの店、本当は濡れ衣なんですよ。通報したの、私なんです。ちょっと泣いてみただけなのに、本当に信じる人がいるなんて。私、演技の才能があるのかもしれませんね」
僕の手が止まった。
彼女は顔だけをこちらへ向け、口元に薄い笑みを浮かべた。
「最近、そういうやり方で稼ぐ配信者、増えてるんですよ。ここ、商店街で長くやってるんでしょう? まだそういう客に当たったことないんですか?」
次の瞬間、店の外で大きな音がした。シャッターが外から叩き上げられ、数人の警察官が踏み込んでくる。靴音が床に乱暴に響き、先頭の刑事が店内を見回したあと、僕の前で足を止めた。
「真壁悠斗さんですね。施術中に性加害を受けたと訴えている女性がいます。警察署まで同行をお願いします」