あらすじ
二〇三七年、超大国の重しが世界から外れる。
ロシア連邦が、東で南で西で同時に崩れた。
その瓦礫の縁で、三つの古い国が同時に立ち上がる。
海に閉じ込められ資源を持たぬ日本。
オスマンの記憶を呼び覚ますトルコ。
二度、地図から消されたポーランド。
それぞれの指導者が、自国の生命線を守るために合理的に慎重に一手を打つ。
誰も、戦争を望んではいない。
その全てを、ワシントンの一人の男が盤上から見ていた。
唯一の超大国が、最も安く覇権を保つために三つの勢力を泳がせ均衡させる冷徹な棋士。
彼は、自らを「盤を動かす自由な手」だと信じている。
だが――守りの一手の、積み重ねが。
見えないレールを、敷いていく。
十三年をかけて、四人の指導者は軌道上を巡るたった一つの「瞬かない眼」へと視線を収斂させていく。
暴発が「先に撃つな」を破り、ジュネーブで外交が死に東京で配給が始まりワシントンで一人の分析官が閉じる窓を見つめる。
そして二〇五〇年、その眼が撃ち落とされる朝世界は新しい戦争の最初の日を迎える。
問いは、ひとつ。
人は本当に「選んで」いるのか。
それとも、地図に選ばされているだけなのか。
そして――「選ばされている」と言うことこそが、最も高級な責任の手放し方なのではないか。
※本作はフィクションです。実在の国家・地名・機関・役職名が登場しますが、描かれる出来事、および登場人物とその言動はすべて架空のものであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。