あらすじ
気がつくと、少女は見知らぬ不思議な森の中にいた。
冷たい土の感触と、湿った草の匂いだけが現実のように感じられる。けれど、それ以外のすべてが曖昧で、自分がなぜここにいるのかも分からない。
覚えているのは、ただ一つ。
自分の名前が「マナ」であるということだけだった。
それ以上のことは、まるで霧に包まれたように思い出せない。家族も、故郷も、ここへ来る前の出来事も、何一つ手がかりがなかった。
ゆっくりと周囲に目を向けると、そこには奇妙なものがいくつか落ちていた。
群青色のローブ。
魔女のような形をした帽子。
そして、ひときわ目を引く、厚く重そうな一冊の本。
しかし不思議なことに、その本は手に取ってみると驚くほど軽く、まるで紙の重さすら感じないほどだった。
さらに、もっと奇妙だったのは――その本の中には、何も書かれていなかったことだ。
白紙。
ただの空白。
何かが記されていた痕跡すら見当たらない。
「……これ、何?」
声に出しても、森は答えない。ただ木々が風に揺れる音だけが、静かに返ってくる。
それでも、マナはその本を手放すことができなかった。理由は分からない。ただ、それが自分にとって大切なものであるような気がしたのだ。
これは、記憶を失った少女が――
さまざまな場所を巡り、さまざまな種族と出会い、少しずつ世界を知っていく物語。
そして同時に、自分自身が何者であったのかを探していく旅の始まりでもあった。