あらすじ
男は限界を迎えていた。チームリーダーとして全員を率い、Cランク探索者としてやってきた。
だが、仲間の成長を喜べないくらいに自分の能力が落ち込んでいることに気がついている。
話はチームがBランクへの認定試験を終えての時だった。
男からチーム脱退の話が上がる。
「俺はこれ以上、皆の足を引っ張れない。みんな先に行っててくれ。俺も後で追いつく」
「バカなことを言うな、お前の始めたチームだろう」
引き止める声に、男は何も言い返せない。
ただ後ろを振り返ることもせず、無言で引き下がるだけだった。
世界にダンジョンが溢れ、小学生の憧れる職業が探索者に取って代わられる時代。
探索者にとっても重要な要素が求められる。
それが成長率。男の成長率は限界に達していた。
それを上げるためのダンジョン食材、その適合食材をまだ見つけていないと言うのが男の理由。
すでに発見したチームメイトとの差がつく一方であることを理由に男はチームを抜けた。
本宝治洋一(24)は、遅まきながらダンジョン食材専門の料理人に転身した。
チームメイトには言わなかったが、洋一はすでに自分の『適合食材』を探し当てていた。
しかしその食材を調理してくれる料理人だけが見つからなかった。
ならば自分で捌いてみせる。味わい尽くしてすぐにでもチームメイトの元に追いつく。
それだけを希望にその道で15年費やした。
気がつけば39歳。
探索者でやっていくには遅すぎる年齢だ。
それでもなお、自身の適合した食材のポテンシャルを為刈るために再び探索者の道を目指した。
『ゴブリン』
洋一の適合食材はかけだし探索者の壁と言われる存在で、素材価値は0に等しく、肉の流通はされるどころか真っ先に荷袋から破棄される対象だった。
Fランクダンジョンに潜り、ひたすらにゴブリンを食べるだけの配信は、身内向けで終わるはずだった。
底辺ダンジョンの底辺モンスター。しかし料理人の技術力と料理の引き出しの多さ、何より飲酒が解禁されているのと探索者と料理人としての蘊蓄を語る配信者のトークが面白く、深夜帯というのにも関わらず固定リスナーがつくほどの人気となる。
そして特徴的なのは、趣味で始めたサブチャンネルの登録者数がどう考えてもメイン番組を食いかねないほどの規模に達したところだろう。
誰もゴブリン食いなど好んで見る人などいないと世に証明して見せているが、これはそんな世間一般の常識を覆す、史上初の試み。
『ゴブリンは特殊調理食材である』ということを世に知らしめるための配信であるのは当事者ですら思わぬことだった。
※過去作『ダンジョン美食倶楽部』のリブート版です。そのため一部登場人物の名前をお借りしてます。