あらすじ
映画『サイレントネグレクト』
戦争に敗れた日、川江美和は保育園へ息子を迎えに走った。
けれど、門の前にいたのは保育士ではなく、見知らぬ兵隊たちだった。子どもたちは「保護」の名のもとに連れ去られ、母親たちは「子育て支援センター」と呼ばれる白い施設へ移送される。
そこでは、親権も、名前も、母親という呼び名さえも停止されていた。
美和に与えられたのは、実の子ではない赤ん坊。
施設はそれを「仮親権」と呼び、母親たちに知らない子どもを育てさせる。
美和はその赤ん坊に名前をつける。
川江あかり。
しかし、愛着が生まれれば、また引き離される。
何度奪われても、美和は次の赤ん坊にも同じ名前をつけ続けた。
あかり。
あかり。
あかり。
それは狂気なのか。
母性なのか。
それとも、番号で子どもを消そうとする施設への、静かな反乱なのか。
やがて白い廊下に「照合不能」の警告が鳴り響く。
母親たちの記憶が、冷たい管理システムを崩し始める。
収容所は壊れた。
けれど、美和もまた、元の母親には戻れなかった。
腕の中には、誰の子かわからない赤ん坊。
背後から聞こえる、小さな男の子の声。
「ママ?」
その声に、美和は振り返らなかった。