あらすじ

言えなかった言葉は、口の中で溶けて雨に還る。そしていつかの雨の日、少しずつ持ち主のもとへ降り直してくる——。  母を亡くしたばかりの桐野雫は、七月の夕立に濡れて路地の奥へ迷い込み、雨の日だけ開く喫茶「あまやどり」の扉を押した。無愛想な店主・律は、雨水から言葉を汲み、珈琲を一杯淹れる。飲んだ客は、もう届かないはずの「ありがとう」や「ごめんね」を受け取って、静かに泣く。  最後の電話で母を傷つけたまま謝れなかった雫は、母の言葉を求める。けれど律は言う。「まだ、降りきっていません」と。  雨と珈琲の香りに満ちた店で、言い損ねた想いが少しずつ空から返ってくる。泣ける連作短編、開店。

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カクヨム
カクヨム2026/07/03
  • 現在の作品雨の日だけ開く喫茶「あまやどり」は、言えなかった最後の言葉を一杯の珈琲にして淹れてくれる