あらすじ
芸能事務所で敏腕プロデューサーとして働いていた霧島悠真は、担当アイドルグループ《LUMINA》を売るために、睡眠、休日、体調、感情の全部を削っていた。
センターの涙を受け止め、エースの無茶な要求を実現し、小悪魔系メンバーの危うい匂わせを事前に潰し、末っ子メンバーに届く悪意を裏で止める。
アイドルたちは誰も、悠真の献身を悪意で踏みにじったわけではない。けれど彼女たちは、悠真が守ってくれることを当然だと思っていた。
「プロデューサーなら、私の味方でいてくれますよね」
「悠真さんなら、なんとかしてくれるでしょ?」
「私が卒業したら、迎えに来てくれますか?」
仕事とも恋とも言えない距離で甘えられ続けた悠真は、ある日、ライブ後に倒れる。
そして、事務所を辞めた。
退職後の悠真にできたのは、芸能界とは何の関係もない女友達、日向こはるだった。
派手な見た目で、距離感は軽い。けれど彼女は、悠真に何も背負わせない。
「今日は助けなくていい日ですよ。ご飯食べて、帰って、寝てください」
恋人ではない。
付き合ってもいない。
ただ定食を食べ、くだらない話をし、何もしない時間を一緒に過ごすだけ。
その気楽な関係を見たとき、元担当アイドルたちは初めて気づく。
自分たちは、彼を追い詰めた。
守られていたのも、自分たちだった。
そして、それを壊したのも自分たちだった。
炎上、スキャンダル、崩れる現場。
悠真がいなくなった《LUMINA》は、これまで見えなかった現実に晒されていく。
戻ってきてほしい。
もう一度、私だけを見てほしい。
そう願う彼女たちに、悠真は静かに線を引く。
「俺を追いかける暇があるなら、ファンの前で笑ってください。俺はもう、君たちのために倒れる仕事を辞めました」
これは、アイドルたちを守り続けた元プロデューサーが、ようやく自分の人生を取り戻す話。
そして彼を壊した少女たちが、失ってから初めて、彼の優しさの値段を知る話。